2011年1月アーカイブ

もし、環境が比較的均一でまわりに何も妨害するものがなければ、サクラソウのクローンは、空間を株で埋めながら外側へ向かって同心円状に広がっていきます。


株どうしのつながりはすぐに切れてしまうので、大きく発達したサクラソウのクローンは、遺伝的には同一ですが生理的には独立した多数の株の集まりということになります。


クローンは成長に伴い、それぞれの株がちぎれて独立するので、つながりからだけではどこまでが同一のクローンかはわかりません。


しかし、サクラソウの場合、花に目でみてすぐ区別ができるほどの変異があるため、クローンの範囲の特定が可能です。


このことは、サクラソウの研究にとって非常に都合のよいことです。


もともとは1つの種子が芽生えて成長して広がった株の範囲、つまり、クローンを肉眼で見分けることができるからです。


一方、同じようにクローン成長をする他の多年草では、個体(クローン)を肉眼で見分けることはそれほど容易ではなく、酵素多型などの分子遺伝マーカーを用いて個体を識別しなければなりません。


植物は、光合成によって蓄積したエネルギーと物質を、自分自身の「成長」と子孫(種子など)を残すための「繁殖」に振り分けて使います。


成長と繁殖は、同じようにエネルギーと物質を必要としますから、一方を大きくすれば他方は小さくせざるを得ないという、トレードオフの関係にあります。


つまり、種子を十分に生産した翌年にはクローンの成長は抑制され、逆に受粉の制限などで種子生産が振るわなければ翌年のクローン成長が目立ってよくなることが考えられるのです。

それぞれの株は遅かれ早かれ生理的に独立するので、羊のドリーたちと同じ「クローン」です。


伸びた先で生理的に独立した植物体をつくる場合、このような成長を栄養繁殖とよぶこともあります。


しかし、これは樹木がたくさんの枝をつくりながら成長するのと同じで、栄養繁殖というよりは栄養成長とよぶべきです。


垂直方向に茎や幹を立て、さらに水平方向にも枝を張る樹木などを仮に3次元成長をする植物とよぶとすれば、もっぱらクローン成長だけをする植物は、2次元植物といえます。


樹木が利用する光のおこぼれを受けて生活する林床の植物の多くが、そんな2次元植物です。


このブログの主人公であるサクラソウもまた、典型的な2次元植物です。


同じ形・色の花を咲かせるサクラソウのクローンは、1つの種子が発芽してできた芽生えが定着し、クローン成長によって広がったものです。


しかし、サクラソウは暗い林床でじっとがまんをする植物ではありません。


春に季節的な光の窓のある落葉樹林やオギ原で暮らします。河成鎮紀子さんによると、春の光の窓を利用して、精いっぱい光合成をして成長します。


その成長点は地面から離れることなく、成長はひたすら水平方向へ・・・。


環境に恵まれると、生育期の終わりに1株から数個以上の芽ができます。


こうして株(生理的に独立した植物体)が増えていくのです。

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