もし、環境が比較的均一でまわりに何も妨害するものがなければ、サクラソウのクローンは、空間を株で埋めながら外側へ向かって同心円状に広がっていきます。
株どうしのつながりはすぐに切れてしまうので、大きく発達したサクラソウのクローンは、遺伝的には同一ですが生理的には独立した多数の株の集まりということになります。
クローンは成長に伴い、それぞれの株がちぎれて独立するので、つながりからだけではどこまでが同一のクローンかはわかりません。
しかし、サクラソウの場合、花に目でみてすぐ区別ができるほどの変異があるため、クローンの範囲の特定が可能です。
このことは、サクラソウの研究にとって非常に都合のよいことです。
もともとは1つの種子が芽生えて成長して広がった株の範囲、つまり、クローンを肉眼で見分けることができるからです。
一方、同じようにクローン成長をする他の多年草では、個体(クローン)を肉眼で見分けることはそれほど容易ではなく、酵素多型などの分子遺伝マーカーを用いて個体を識別しなければなりません。
植物は、光合成によって蓄積したエネルギーと物質を、自分自身の「成長」と子孫(種子など)を残すための「繁殖」に振り分けて使います。
成長と繁殖は、同じようにエネルギーと物質を必要としますから、一方を大きくすれば他方は小さくせざるを得ないという、トレードオフの関係にあります。
つまり、種子を十分に生産した翌年にはクローンの成長は抑制され、逆に受粉の制限などで種子生産が振るわなければ翌年のクローン成長が目立ってよくなることが考えられるのです。